新宿日本語学校では、毎年11月5日を『にほんごの日』とし、それを記念して、教職員による研究発表会を開催しています。『にほんごの日』は「日本語」を広める、また、学校内外との情報交換によって、新宿日本語学校だけでなく、日本語教育全体の教育の質、サービスの向上に貢献し、11月5日を日本語の記念日に育てていくことを目的としています。
2022年11月4日(金)、秋らしく晴れた空のもと、「令和4年度『にほんごの日』記念 第5回 新宿日本語学校研究発表会」をオンライン、対面のハイブリッド形式で開催いたしました。第5回目のテーマは、「『評価』について問い直す」とし、講演、オンライン口頭発表を行いました。参加者は、対面は、学校内外からの講演者、聴講者、スタッフ等を含め約30名が、オンラインは23名でした。
午前中は、基調講演が2つあり、1つ目は、清風情報工科学院校長の平岡憲人先生に「ルーブリック入門」というテーマでお話をしていただきました。ルーブリック評価作成について、身近なものを例に出し、分かりやすく説明してくださったので、楽しく学ぶことができました。ルーブリックは、教師間、学習者間で評価指標と基準を共有するため、評価の根拠をより明確に示せる点にメリットがあります。しかし、適切なルーブリックは、1回でできるものではなく、何度も修正を加え、ブラッシュアップさせる必要があるため、時間と根気が必要だということも分かりました。今回の講演を拝聴し、是非、新宿日本語学校版ルーブリック評価表を作成したいと思いました。この熱が冷めないうちに、すぐにでも着手できればと思います。
また、2つ目の基調講演は、カイ日本語スクール校長の山本弘子先生に「非常勤講師評価制度導入、実施概要」というテーマでお話をしていただきました。カイ日本語スクールでは、評価制度を1から作成し、10年前から導入していると伺い、本当にすごいと感じました。評価制度を作成するにあたり、まず考えなければならないのは、どんな学校を目指しているのか、どんな教師を求めているのかという点を明確にすることです。ここが何より肝心な点であり、新宿日本語学校が最初に取り組まなければならない点であると気づかされました。非常に刺激を受ける講演でした。
午後は、3つのオンライン口頭発表が行われました。1つ目は、伊勢みゆき先生による発表で、テーマは、「教師の中のカリキュラム・アーティキュレーションを考える―その挫折と再生の考察」でした。お話を伺い、レベル間のつながりと、風通しをよくすることは非常に重要であることを再認しました。今後、レベル間の連携をとっていくために、授業見学、レベル資料のアップデートと告知、レベル主任会議、プログラムごとの話し合い等、できることはたくさんあると思いました。
2つ目の発表は、「WEBプレースメントテストの精度の検証と改良の試み」で、自分の発表でした。テスト分析をすることで、数値による根拠をもって、テストを改良することができるという点をお伝えしました。聞いてくださっている方々に、できるだけ内容が伝わるように努力したつもりでしたが、分かりにくい点も多かったと思います。今後、分かりやすく伝える練習が必要だと感じました。
3つ目の発表は、中級基礎a午後クラス学生、CLOUDY ANTHONY MICHAEL(クラウディ)さんによる「Evaluation Through Action Perspectives on Assessment from American education and Game Development」でした。アメリカの教育制度や評価について、マイクロソフトの評価方法についてのお話は大変興味深かったです。また、新宿日本語学校への授業のアイディア提供やコメントは非常にありがたく感じました。このような貴重な意見を取り入れて、カリキュラムや評価、授業等を改善していきたいと思います。
そして、今回の研究発表会の特別講演として、江副隆秀校長先生より「『2030に向けて、世界の教育が変わる』日本語教育もその波の中にいる」というテーマでお話を伺いました。予測不能な時代の中で、教育そのものの在り方も変わってきており、日本語教育も例外ではないというお話を伺い、この変化にどのように向き合っていけば乗り越えられるだろうかと考えさせられました。これからは、「ニュー・ノーマル」における教育を、日本語教育にどう落とし込んでいくかという視点で考えていかなければいけないと背筋が伸びる思いがしました。
最後に、惣万先生より閉会の挨拶をしていただきました。
今回で5回目の「『にほんごの日』記念 研究発表会」が開催できたことを大変嬉しく、またありがたく思います。今後は、学生も参加できる「にほんごの日」の開催についても考えたいと思っています。そして、この「にほんごの日」を、教師も学生も、そして「にほんごの日」自体も成長できる一日にし、校内だけでなく、校外、世界に発信できるような場にしていけたらと切に願っていいます。
来年は、今回の反省点やアンケートの貴重な意見を反映し、より内容の充実した研究発表会にしたいと思います。
教務
渡邊 百里
2022年11月7日